社会福祉法人アール・ド・ヴィーヴル設立を記念して開催する展覧会第二弾!
アール・ド・ヴィーヴル所属メンバー全員の作品による展覧会を開催いたします。
三の丸ホールの1階と2階のギャラリー回廊を飾ります。
みなさまのご来場をお待ちしております。
「対話するアートー障がいがある人たちの表現ー」vol.2
アール・ド・ヴィーヴル展
日時:2023年5月3日(水)〜14(日)9:00〜21:00
入場料:無料
会場:小田原三の丸ホール ギャラリー回廊1.2階
小田原市本町1-7-50
https://ooo-hall.jp
はじまりは今から10年前。
絵を思い切り描いてみたい、という障がいがある人たちの願いを叶えるために、 創作活動ができる小さな場に講師をお招きして、ワークショップをスタートしました。
仲間たちは毎回心待ちにして、集まるたびに夢中で描きました。
そこで生まれた表現は、堰き止められていたエネルギーが噴出しているように力強く生き生きとしていました。そして、想像を遥かに超えて魅力的だったのです。
一年ほど経った頃、地元のギャラリーが展覧会をしませんか、と声をかけてくださり、作品展示を通して、たくさんの出会いが生まれました。
アートが好きで訪れる人、特に障がいのある人たちのアートに興味がある人、障害がある人とその家族、生きづらさを感じている人、そのほか様々な背景を持つ方々…
作者は、どんなことを伝えたいのか、なぜ描き続けるのか?
展覧会に訪れた人たち、そして私たちの中からも、たくさんの問いが生まれてきて、作品との対話が、互いの理解や結びつきを生み出してくれました。
言語の社会で生きていると、障害がある人の表現は、兎角見過ごされてしまいがちです。
さまざまな表現を味わい、楽しんでいただく中で、
障がいのある人たちの日々の営みに思いを馳せていただくことから
ダイバーシティ<多様性>を慈しむ豊かな社会は広がっていきます。
皆様と障がいがある人の表現が出会い対話する機会となりましたら幸いです。
最後に、この企画にご協力くださった皆様に心より感謝申し上げます。
社会福祉法人アール・ド・ヴィーヴル
理事長 萩原美由紀
「対話するアート 障害がある人たちの表現」に寄せて
1993年に東京の世田谷美術館で開催された「パラレル・ヴィジョン-20世紀美術とアウトサイダー・アート 」展は大きな転換点だった。世界4か国を巡回したこの展覧会は、日本においてアウトサイダー・アートが大規模に展示された最初の展覧会であり、そのインパクトは美術関係者のみならず、医療、福祉、教育など社会の多方面に及んでいった。その後「エイブル・アート・ムーブメント」の広がりとともに、障害がある人たちによる表現活動は多くの人々の目に触れるようになった。
日本での障害のある人たちの美術作品は総称として「アール・ブリュット」、「アウトサイダー・アート」などと呼ばれている。しかし、その言葉の定義は明確ではなく立場や考え方によって解釈はさまざまである。
「アール・ブリュット」は、1945年フランスの画家ジャン・デュビュッフェが、精神疾患患者や幻視者など美術の専門教育を受けていない人々による絵画や彫刻を、アール・ブリュット(仏)=「加工されていない・無垢・生(き)の芸術」と呼んで高く評価したことに始まる。
「アウトサイダー・アート」はアール・ブリュットの英訳として、1972年イギリスの美術評論家ロジャー・カーディナルが作った言葉である。みずからの行為をアートと認識することのない者によって営まれる美術表現や生み出される作品、美術だけでなく社会の主流の外側で制作する人々の作品にまで概念は拡がり、プリミティブ・アートや民族美術、ホームレスの作品なども含まれるようになっていった。
日本ではいわゆる「障がい者アート」という呼び方もあるが、これは美術のカテゴリーではなく、福祉あるいは社会的な視点を反映して用いられる。
いずれにせよ、こうしたジャンル分けやカテゴライズすることや細分化して意味づけすることに大した意味はない。本質的にはどうでもいいことで、結局そこには「アート」があるだけなのだ。
障害がある作家の多くに共通しているのが、表現することに費やされるエネルギーの凄まじさである。いわゆる一般的な「美術」にはさほど関心がない、けれども自分の制作となると、細部へのこだわり、集中力、色彩感覚の豊かさ、緻密な構成力など、生来の障害特性と相まって驚くほどの熱量を注ぎ込む。
多くの美術家が創作活動で自己を表現しようとするのと同様に、あるいはもっと何倍もより切実に、「表現することでしか他者に自身の感情を伝えることができない」という思いが「芸術」を生み出すモチベーションとなる。切迫した内なる思いが強ければ強いほど表現はさらに強度を増していく。
作家ジャン・ジュネの秀逸な芸術論「アルベルト・ジャコメッティのアトリエ」にはこう記されている。
「美には傷以外の起源はない。どんな人もおのれの裡に宿し、守っている傷、独特な、人によって異なる、隠された、あるいは眼に見える傷、その人が世界を離れたくなったとき、短い、だが深い孤独に閉じこもりたいときにそこへと身を退くあの傷以外には」と。まさしくその通りだ。
心理的な傷、病気、障害、人は多かれ少なかれそれぞれの傷を抱えている。生きるということは、傷とともに生きるということである。そして、人間の生み出すあらゆる表現には治癒的側面があるのだ。癒されるのは個人だけではない。社会も同じだ。個人と社会は当然のことながらつながっているのだから。
障害がある人たちの作品には言語化できないものがたくさん詰まっている。作り手自身が言語的アウトプットが苦手だったり困難だったり、そもそもアート・芸術の文脈で表現していないことが多い。にもかかわらず作品は見る人の心にぐんぐん入ってくる。意味するものが何なのかわからないまま惹かれてしまうのだ。彼らの作品に潜む言語化できない表現領域の広さと深さは、古代から未来までをも網羅する「人類」としての何か大切な必然性が内包されていると感じさせる。たとえばプリミティブアートとの親和性。アボリジナルアートや西アフリカの絵画や仮面となぜ似てくるのか。あるいは抽象絵画との親和性。問題行動と呼ばれる行為とアートパフォーマンスとの親和性。「芸術」の概念が生まれる前の「発生」から思考していくと、西欧の文脈から生まれた芸術の制度に縛られない、人間が表現することの意味が別な形で見えてくる。
現代社会の中では決して生産性が高いとはいえない、むしろ低いと思われている福祉施設という場所から生まれてくる驚くべき表現の数々。表現活動がおこなわれている現場は、福祉、医療、教育、アート、経済といったさまざまな要素が一点に交差する稀有な場でもある。そこは有用性やなにができるかではなく、「できない」ことを前提に構造化された世界だ。アートは希少性と才能のうえに、福祉は平等性と公平性のうえに成り立つ。この一見水と油のような世界観が融合したときになにが起こるのか。人間が表現すること、アートの根源はどこにあるのだろうか。
本展キュレーター 中津川浩章
展覧会キュレーション:中津川浩章
展示パネル:岩澤深芳(写真) 牛山惠子(文章・写真)
主催:社会福祉法人アール・ド・ヴィーヴル
助成:令和5年度神奈川県マグカル展開促進補助金
後援:小田原市、小田原市教育委員会、神奈川県
関連イベント 1
講演会・クロストーク
『障がい者アートとインクルーシブ社会』
2023年5月6日(土)14:00〜
小田原三の丸ホール(小ホール)
チケット好評発売中
三の丸ホール/ハルネ
オンラインチケット(Peatix)
https://artdevivre2023event0506.peatix.com/
講演会登壇者:播磨靖夫(「たんぽぽの家」理事長・2009年芸術選奨賞・2022年令文化功労者受章)
モデレーター 中津川浩章
クロストーク
やまなみ工房施設長:山下完和
工房まる代表理事:樋口龍二
アール・ド・ヴィーヴル:萩原美由紀 中津川浩章
関連イベント 2
スクランブル・ダンスプロジェクト公演
『ひかりのすあし』
2023年5月14日(日)16:00開演
小田原三の丸ホール(小ホール)
チケット好評発売中!
https://landfes.com/sdp2023/
障がいの有無を越えてダンスを創るスクランブル・ダンスプロジェクト、三の丸ホールでの公演!
ゲストに韓国より来日する障がい者のダンスカンパニー、
そして渡辺俊美(TOKYO No.1 SOUL SET)が登場!
日韓共同トリプルビル公演&トーク
1. VIVADEAF Dance Art Company(韓国)『Pumbaa, Ya!』
2. スクランブル・ダンスプロジェクト『ひかりのすあし』
3. 渡辺俊美とスクランブル・ダンスによるコラボセッション『MUSIC&DANCE!』